ドレミの秘密
ドレミファソラシドという音程はどうやって決まっているのでしょうか.

「絶対音感」という言葉があるくらいなので,絶対的な指標が存在しているものだと思っていましたが「音階の周波数一覧表」といった資料を見かけません.そんな単純な問題ではなさそうです.

昔アコースティックギターのチューニングにA(ラ)の音叉を使っていました.440Hzのものです.でもオーケストラによってはAを443Hzとしたり448Hzとすることもあるとか.基準周波数が演奏者の都合で変わってしまうのでは科学的に割り切ることはできないかもしれません.

ここではわたしが調べた範囲のことを簡単にまとめておきます.

▼自然(ピタゴラス全)音階
弦楽器を想像してみてください.

  • 長さが1の音をドとすると,長さ2分の1の音は1オクターブ高いドである.
  • 長さが1の音をドとすると,長さ3分の2の音は5度高い音(ソ)である.
  • 1オクターブ低いドは弦の長さを2倍にし,5度低い音は2分の3倍にする.

    これらの条件から他の音階も作り出すことができ,和音がきれいだったりするのですが,転調が複雑になったり,作り方によっては1オクターブ高いドの長さが2分の1ちょうどにならなかったりします.

    ▼平均律音階
    ピアノの鍵盤をみるとわかるように1オクターブは12個の半音から成っています.むずかしいことは考えずに1オクターブを12等分して音階を作ったのが「平均律」です.厳密にいうとピアノの和音がうなりを生じたりするそうですが,転調も自由ですし,メリットのほうが大きいとされているようです.

    Microsoft Excelで1オクターブ分を計算してみました.

      平均律 周波数 長さ(mm)
    2^0 1 200
    2^(1/12) 1.059463094 188.7748625
    2^(2/12) 1.122462048 178.1797436
    2^(3/12) 1.189207115 168.1792831
    2^(4/12) 1.25992105 158.7401052
    ファ 2^(5/12) 1.334839854 149.8307077
    2^(6/12) 1.414213562 141.4213562
    2^(7/12) 1.498307077 133.4839854
    2^(8/12) 1.587401052 125.992105
    2^(9/12) 1.681792831 118.9207115
    2^(10/12) 1.781797436 112.2462048
    2^(11/12) 1.887748625 105.9463094
    2^(12/12) 2 100

    たとえば長さ200mmのパイプを低いドとすると,高いドは長さ100mmになります.直径12mm(内径8mm)の塩ビパイプを8本切り出し,片側をプラスチック板でフタします.それをテープで仮止めすれば「パンフルート」の出来上がり.

    最初はプラ板を丸く切るのが面倒で,小さな発泡スチロール球を詰めたのですが,それではパイプ長が変わってしまい音階がズレて聞こえるので,不精せずにフタを作りました.低い音を鳴らすにはコツが要りますが,それらしいドレミが鳴ります.これはもちろん絶対音階ではなく相対音階です.

    低いラが440Hzだとしたら,ドは半音で3つ上になるので上表から1.189207115をかけて約523Hzということになります.高いほうのラは当然880Hzです.

    じつは最初,自然音階で計算してパイプ長を出したのです.計算していくと釈然としない部分が出てきたのですが,とにかくそれでパイプを切り出して笛を作ってみたのです.その後,そのままでは気持ち悪いので平均律ではどうなるか計算してみたというわけです.結果として大きな違いはありませんでした.趣味としては自然音階を採りたいのですが,子どもに説明しにくいので平均律を採用した部分もあります.

    音楽は言語とおなじで,文法が先にあったわけじゃなく「気持ちのいい響きを生み出すルールを探っていったらこうでした」という部分が大きいことを知りました.自然音階にこだわるとクラシック音楽がもっと楽しめるかもしれませんね.

    ★ ★ ★

    さて,いま作ったパンフルートの低いドは何Hzなのでしょうか?

    音響測定ソフトでパワースペクトルを調べたところ400Hzちょっとです.800Hzと1200Hz付近の山が「倍音」ですね.「基音」の整数倍の音が出ています.1400Hz付近の「丘」はスースーと吹き抜ける空気の音のようです.

    参考までに,つぎのパワースペクトルはオカリナのものです.倍音はありますが,パンフルートとは異なるのがわかります.

    もうひとつ,これはピアノ(クラビノーバ)です.

    つぎは何の音かわかるでしょうか?

    これはわたしの「ア〜」という声です.(笑)

    これだけではわかりませんが,倍音成分が多いほうが音が豊かに聞こえるような気がします.

    図解雑学 音のしくみ』(中村健太郎著・ナツメ社刊)によると,笛の音程は筒の長さで決まるそうです.「片側が閉じた筒の共振波長は,筒の長さの4倍である.例えば,10cmの筒の共振周波数は,波長との関係に従って,次のようになる.
    340[音速](m/秒)÷(0.1x4[波長])(m)=850[周波数](Hz)」.

    低いドの筒は長さ20cmですから上式により425Hz.最後は測定結果と計算が合ってスッキリしました.

  • MAY 2001